夕方、シルエレへ。「真夏のプログレ伝道祭」という大仰なタイトルに応え、かなりの濃度の客が集まっていた。
一発目はRushのカバーバンド「Natural Science」。”The Spirit Of Radio”に始まり、”Red Barchetta”で盛り上がったところに、渋く”Witch Hunt”と来た。詩のテーマに沿ってギターが醸し出す重く暗く激しいリフが心地いい。そして何より繊細なハイハットワークと和太鼓のような躍動的なドラミングの対比が聴きどころ。
続いてドラマーがヘッドホンを装着して「Grace Under Pressure」モードに。”Distant Early Warning”, “Red Sector A”と来て、”Kid Gloves”。自転車でここに来る途中にちょうど聴いていたので思わずにやけてしまった。曲も歌詞もコンパクトでいい曲だ。
最後はYYZ〜2112: The Temples Of Syrinx〜Tom Sawyerのメドレー。Rushファン大満足のセットリストだった。演奏も素晴らしく、忙しいベースをこなしながら高い声も出ていて感動。ただ、キーボードの音が変だったかも。ところどころでまったく聞こえず、代わりにハウリングノイズが出ていた。こないだはバッチリだったから、次は万全の調整を期待。
二発目はKing Crimsonのカバーバンド「ドクター・ペッパー警部」。35年間進化し続けている怪物バンドのカバーだけに、何をやるかまったく予想できない。事前にはとりあえず’60s (「宮殿」), ’70s中期 (「太陽と戦慄」〜「Red」), ’90s (「VROOM」以降)あたりからの選曲を予想していた。
ステージの片隅にロバートフリップ用の椅子が置かれ、ギターシンセのチューニングが始まり、フレットレスベースやスティックがセットされる。「THRAK」あたりから来るかな?でもドラムは1セットだしスティックも1本だな…と思ったら、フリップのギターソロからメンバーが順に入ってくる凝った演出で幕開け。始まってみれば、’80s Disciplineクリムゾンだった!意外な展開に少し戸惑ったが、ほとんどディスコサウンドな曲の連発に会場も徐々にのってきて、最後を「21st Century Schizoid Man」で締めるに至って十分に楽しめた。
ここでもギターのハウリングがところどころきつくて、なかなかエイドリアンブリューのようには行かないのかなと思った。全曲歌いながらやってるわけだし、あれはほとんど曲芸だな…。
最後はGenesisのカバーバンド「怪奇骨董音楽団」。名前からして’70s前半のPeter Gabriel時代が中心かと思ったら、’70s後期中心の選曲だった。ほとんど聴いたことのない曲ばかりだったが、ライブで聴けてとても楽しめた。徐々にポップ化しつつも、まだプログレ色が残り、Peterが嫌ったインストパートも大事にした佳曲ぞろいなんだな。これはぜひオリジナルを聴かねばと思わせられた。
3バンドの中ではもっとも演奏に安定感があり、MCも含めて自分達も楽しみ、観客にも楽しんでもらおうという気持ちがよく見えたパフォーマンスだった。トリを飾るにふさわしい、楽しいステージに拍手。
3時間あまりも聴いて疲れたかと思ったら、尻が痛いのを除けば問題なかった。またどんどん音楽を聴いてライブにも行きたくなっちゃったZO。