あと一週間の辛抱である。洗濯はけちるわけにはいかない。しかし、洗濯の待ち時間に飲むのはけちるべきである。けじめのある私はそう決断したのである。
ちょうど東野圭吾の「十字屋敷のピエロ」を読みかけなので、バーではなく喫茶店に入った。古い時計や骨董品が並び、明治・大正の空気が満ちている。なかなか落ち着いた、いい雰囲気の空間だ。左の席のおばちゃんと、右のばあさんの、二つの口から吐き出される煙がいただけなかったが、用意の扇子で吹き飛ばし、心の平安を保った。なぜかマンデリンに酸味があったが、マスターの嗜好なのかもしれない。
バス通りだが、窓や扉は十分に厚く、また、駅の待合室を思わせる色合いと造りなのであまり気にならない。本を読むにはいいな。
ところで、しばらく店名の「物豆奇」が読めなかったのだが、あとで「ものずき」と読むと分かった。なるほど…。気に入ったのでまた行くとしよう。