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「まぼろし」

  • まぼろし」(2001, フランス, フランソワ・オゾン監督; 原題 “Sous le sable”)

     美しい映画だ。全編を通しての、愛しいまでの静寂とゆったりとした時の流れは、まるで白昼夢のよう。主演のシャーロット・ランプリングがにじみ出す女の心の翳りに、激しく引き込まれた。

     バカンスで夫婦水入らずの時間を過ごし始めた矢先、ジャンが突然に失踪した。マリーは呆然としながらも、元の生活に戻り、平静を装い今まで通りの暮らしを送ろうとする。だが彼女は、夫の失踪をどうしても受け入れることはできず、ジャンのまぼろしと共に生きていくのだった…。

     邦題の「まぼろし」というのはたしかにそうした容易な連想を与えてくれるが、原題の「砂の下」にこめられたものはもっと深いだろう。思うに、砂とはバカンスの象徴であり、現実と夢まぼろしを隔てる存在なのではないか。夫と共に過ごした昼下がりの砂は、温かくそしてやさしかったが、夫が失踪した夜、ひとりで海に戻ったときのそれは冷たく、無機質だった。さまざまな出来事を経てもなお受け入れられない夫の死。しかし、彼女は再び彼の地を訪れる。ラストシーンで彼女が真っ白い砂を踏みしめて歩くシーンは、まさに現実と向かい合うプロセスを表している。このあとの彼女がどう生きていくのかはおいても、ジャンとの思い出は、この砂と共に永遠に残るのだ。

     こういうのを見ると、夫婦とか恋人ということについて考えてしまうね。愛という名の元に、すべてを与え、受け入れてきたつもりでも、同じく愛という名の元に、半ば無意識に口を閉ざし、目を背けていることがあるのではないか。そして、この話のように、それが失踪と結びついているかもしれないとしたら…。

     シャーロット・ランプリングは、五十半ばを過ぎているというのに、とてもきれいでした。赤いワンピースはすごく似合っていたし、ラブシーンも美しかった。言葉(フランス語と英語)もきれい。フランス語をしゃべりたくなるよ…。

     ところで、「あなたには重さがない」って、言われたら堪えるだろうな…。ていうか、セックスのときに笑われるのが男はいちばんつらいです。女性のみなさん、男と別れたい折はぜひお試しください。(´・ω・`)

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