西郷亭のスタミナ弁当

投稿者: | 2004年5月19日

 雨が降っていたが、外で食べようと思って表に出たら、目当ての第一候補は定休日、第二候補は都合により早じまい、しかも中でうまそうなまかないを食べてますよ!!そして第三候補の店の看板からは、好きだった定食が消えていた。うわーん!

 こうして無意味に高まった行き場のない食欲は、得てしてつまらない食物で消費されるものである。この日とて例外ではなかった。

 駅前の西郷亭の窓を覗くと、うるさいほどに踊り、本能に訴えかけてくる「スタミナ弁当」の文字。スタミナですよスタミナ。やつら俺の腹の中を見透かしてやがる!そうだ!俺に必要なのはスタミナだ!

YEAH!! WHAT I WANT IS スタミナ! ALL I NEED IS スタミナ!

 店内に踏み込むや、そのスタミナ弁当をはっしとつかみ、血走った眼がさらに何かを物色する。ところが、このついでが命取りであった。つかんだのは「冷製バジルパスタ」。いかにもおしゃれなんじゃナイ?冷製でバジルだなんてとてもサッパリじゃナイ?パスタなんて前菜なんじゃナイ?

 衝動というのは、目的を部分的にでも達成していくと、どんどん冷めていくものである。実際、家に帰り食卓に弁当の袋を下ろしたときにはすでに、獲物を狩ってきた達成感と安心感からたいそう落ち着いた気分になっていた。悠然とした所作でお湯を沸かし、冷蔵庫からしば漬を出して、紅茶が入るのを待ち、テレビを見てさらに落ち着く。

 そして、おもむろに弁当に取り掛かる。しかし、弁当の隅を見て萎えた。すでにしば漬、しかも色も切り方も同じものが入っているじゃないか!だがまあいい。しば漬を足して大盛りにして何が悪い。

 まもなくスタミナ弁当を平らげ、お茶を飲んで落ち着いたらさらに萎えた。よく見ると、袋の奥になんかまずそうなパスタが残ってますよ…。なんだ、このすっかりのびたパスタは!スタミナのスの字もねえ!ていうかスっぱい変な味がするYO!!!

 かくして、大きな後悔が腹に収まった。

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