前菜の二品目。テリーヌもよかったが、こちらの温かいソテーが絶品だった。皿が運ばれてきたときはバルサミコ酢の刺激臭に戦いたが、口に運んでみれば実にまろやかで後を引く。筍の若い歯ごたえと芳醇なフォアグラのコントラストがすばらしく、やわらかい葉物の取り合わせも抜群。
そして、ずわい蟹のタルタル アボカドサワークリーム添え。アボカドと蟹身の取り合わせは初めから約束されたようなものだが、まわりの彩りも豊かな野菜達が、舌にも体にもおいしい。
さて、いよいよメイン。まずは仔鳩のロースト。ピジョン・グレミヨンというブランドのこの鳩は、Hubbel(ユベル)という品種で、とうもろこしをたっぷり与えて飼育されているそうだ。肉厚でぷりぷりとした食感は、今までに味わったことのないものだった。言葉で伝えるのはなかなか難しいが、若干レバーっぽい、やわらかいハツのような弾力と言えばいいだろうか。肉自体がすばらしいのだが、焼きが絶妙で、きれいなきつね色の皮にナイフを入れると鮮やかに現れる、紅潮の極みともいうべき濃いピンクの身肉は食欲を鷲づかみにする。2,000円近くの追加料金にも納得の逸品だった。
そして、仔羊とじゃがいものロースト。これも名物らしいが、ボリュームたっぷりだ。ソースはガーリック風味で、羊特有の臭みは感じない。骨はなく身もやわらかいので、無心になって肉そのものを楽しめる。じゃがいもとの相性は言うまでもない。
そして締めのデザート。紅茶のクリームブリュレが絶品だった。ダージリン、アールグレー、ジャスミンを使っているそうだ。風味がすばらしい。やられた。もちろんリンゴのタルトも適度な酸味と甘みのバランスがよく、紅茶によく合う。コーヒー・紅茶に添えられたマカロンもしゃれた小品だった。
ここは野菜も肉もおいしく、値段も非常にリーズナブルで大満足。ワインを含めたトータルでは結局コース料金の倍以上になったが、まったく高いと思わない。今日の注文から漏れたトマトのスープや魚料理、牛肉や豚肉も、また来て食べてみたい。まことに幸せなディナーでした。
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