通勤途中。四ッ谷の桜は毎年きれいだ。携帯だと写り悪いね。
子供の頃から、色あせた昔の映像を見たりすると、当時の世界はそんな色だったのかと思い込んだ。自分は暗く、曇った世界に生きているという思い込みとともに、自らの記憶までもが瞬く間に色あせていった。
鮮やかな服で着飾り、きれいな色に囲まれて過ごしていると、場違いな所にいる捻じれた感覚が、心の奥を締め付ける。でも、そうして今は輝いている。明日には色あせるとしても。
そんなのどかな想念が、生暖かく薫る風に吹かれて、桜の花びらとともに舞い散っていった。