ここ何ヶ月かの活動は、市場における人材や商品、サービスの価値ということを考える機会となった。その中で、一貫して下請けの受託開発ということを避け、エンドユーザと直接やりとりする仕事をしてきた自分にとって、昔からの疑問はますます大きくなっていった。
新しいシステムを開発・導入する際、ベンダー側もエンドユーザ側も、当然ながらエンドユーザにとっての費用対効果ということを考えるはずだ。すなわち、エンドユーザがシステム導入に伴って支払うコストに見合う効果を得られるのならば、取引として成立しうるのである。開発コストというのは、取引とは関係のない、ベンダーの社内の些末な問題に過ぎない。
ところが、システム開発の下請けではどうだろう。下請け業者が開発するシステムの一部分の価値というのは、「工数」という一点でしか量られないのである。せいぜい、必要な技術分野におけるスキルを備えた技術者の単価、というところで数%の上乗せを計るくらいが関の山だ。
つまり、エンドユーザに大きな利便性を提供するどんなにすばらしい機能であっても、一週間で実装できる限りは一週間分の工賃しか出ないということになる。しかも、エンドユーザからの感想や意見も、障害報告を除いては伝わってこない。これでは工夫のしがいもないし、創造性を発揮する意欲も沸いてこない。残る付加価値というと短納期・低単価・高品質という目盛りの話になってしまい、苛烈な直線的コスト競争にさらされるばかりとなる。
やはり、自らニーズを捉え、市場に問い、跳ね返りを得るということを繰り返す現場に身を置いていたい。そして、人月単価だとか、技術料だとか、そんなケチな話ではなく、これにあなたはいくら払えますかという勝負をしたい。開発コストとその製品の価値が、単純な比例関係にあるはずなどないのだ。そんなことは、たくさんのお金をつぎ込んでいるのに使い物にならないシステムがごろごろあったり、昔自分でちょろっと書いたスクリプトが今では職場中あるいは全世界で使われていたり、という状況を見てもわかりきっているはずなのに、今日も相手の顔色を想像で伺いながら、つまらない数合わせの見積書を書いている。おまけに、実費ベースの見積なのに顧客の購買部門から定率の値引きを要求されたりする。そんな現状を革命しよう!いいものを作って相応の金を取ろう!
これを消極的に突き詰めると、「意味のないところでは頑張らない」ということになってしまうのだが、それを許さないプロ意識、皮肉な言い換えをすれば技術者の惰性というものがまたあって、益にもならない頑張りを見せてしまうのが哀しいところだ。しかし、理想は秘めていては何もならない。どこかで実現しなければ。僕にとっては次の職場が、抱いてきた理想を具現化できる場になればと思っている。
gangare
2,3日で作ったしょぼしょぼスクリプトで2,3億売り上げたこともあるしなあ。
人月単価って社会主義ですよね。市場経済じゃない
じぶんの理想の環境をじぶんでつくっていく姿にいつもはげまされてまっす☆
例のキーボード!なつかしげる〜
> ようやく筆が乗ってきた。
まだやったんかいな。
まぁ、お仕事がんばってください。
>nanasi
tonx!!
>チルエア
はじめますて!
そうですよね。掛けた時間に関係なく、いい仕事をしたときは
相応に、時には不相応なくらい儲けていいはず。
そして、そのコメントで今日のエントリが「社会主義 革命」で
ひっかかるようになりました!
>risotto
こういうわがままは誰に遠慮することもないから、みんな
どんどんやるべき!道具に限らず、自分の方を環境に適応
させようとするあまりストレスで消耗してしまう人がいるけど、
適応は依存に変わり、依存は気力や意欲の低下につながります。
環境は自分で作らなきゃ。
>anonymous
いつもは余裕を持って書くのだけど、今回は
バイオリズム的にどん底だったから大変だった。
技術的なことを淡々と書くだけなのに、書けない
ときはほんとに書けないものだと体感しました。
別にしゃれたことを書こうとか考えてるわけでも
ないんだけどなあ。
でも、新しい仕事も始まるので気力面は上昇中。
がんがるぞ、おー!
日本は世界で唯一成功した社会主義国家ですから
そういう例には事欠きませんね。
原稿拝見する日を楽しみに待っています。
お体に気をつけて。
programmingに対する評価というのは薄いですね。
一行で切り売りしかいま評価しようが無いのは
つらいのかもしれません。どうかがんばってください。
>ひそかな読者
原稿めちゃくちゃ遅れててすみません。
明日中には仕上げに入れると思います。
朝早くに出社して時間外に書こうかな。
深夜と早朝がいちばん捗るけど、今の生活は
その大半を睡眠に費やしてしまっている…
>maho
その点で、オープンソースってのは商売上はかなり微妙。
下請けが立場的に弱い一因には、ソースコード自体が
成果物であり納品物になるので、「このくらいの分量の
コードなら、作業コストとしてこのくらいだよね」などと
勝手に見積もられてしまうことがあるんじゃないかと
思います。
このコードを売るというモデルでは利益率は上がらないので、
サービスを売り、ライセンスを売るという方向に行きたいが、
過当競争の中ではよほど優れたものやうまくニッチを捉えた
ものでなければ難しい。こちらは自分の会社でやっているけど、
大きくするのは相当大変と実感しています。
ならば、自社サービス展開と法人相手の徹底したコンサル、
カスタマイズ。そしてお金を持っているIT的に未開拓な業種
への営業。ということで去年、今年と自らベンチャー企業に
飛び込んで模索しています。