Happy The Man & Camel

投稿者: | 2004年9月7日
  • Happy The Man「3rd: Better Late…」(1983, 3rd)

     実際には1979年の作品。バンドの解散などの事情から発表は1983年まで遅れたが、楽曲、演奏ともすばらしい。カラフルでムーディーでスリリングな、Happy The Man円熟の味。

     Camelへの加入前から、Kit Watkinsはそのメランコリックなファンタジー世界を先取りしている様子が伺える。一曲目の”Eye Of The Storm”は下で紹介のCamelのアルバムにも提供された。”At The Edge Of This Thought”や”Labyrinth”でフルートが間欠的に吹くところなどは奇数拍子と吹奏楽器の相性を感じずにはいられない。そして、きらびやかな装飾に彩られながらもテクニカルな迫真の緊張感を基調とした前作から一転し、ベースとドラムを初めするやわらかく暖かいプレイが耳にやさしく心地よい。

     けっこう気に入ってるのが”Run Into The Ground”。お家芸の疾走感とふしぎな浮遊感でずんずん地中に潜っていきます。5-6-5-4/8の変態リズムをスローテンポに落とした中間部でもキープしているのが律儀で笑える。ドラムもぴたぴた決まりまくりだし、こんなおもしろい音楽はぜひ続けてほしい。ああ、そろそろ二十年ぶりくらいのアルバムが完成するんだね。楽しみだ楽しみだよ楽しみだ楽しみ!(5-6-5-4)

  • Camel「I Can See Your House From Here」(1979, 8th)

     キャッチーでポップできらびやかでファンタスティックな音楽を変わらず奏で続けているCamel。前作「Breathless」(1978, 7th)のラインナップから、前期Camelの中心人物の一人だったPeter Bardensが抜け、前々作「Rain Dances」から参加し、カンタベリーの風を吹き込んだRichard Sinclairも去ってしまった。フュージョンがかったジャジーな雰囲気に溢れ、グルーヴィなパワーポップの中にせめぎ合う迫力のインタープレイを展開した前作から、いったいどう変わったか。

     心配は無用。CamelはCamelです。エッジの効いたギターが心地よいパワーポップナンバー”Wait”で幕を明ける。これ、聴けば聴くほどかっこいいんだよね。自在の変拍子で緩急自在、まとまりもよく無駄な音がない。ギターもムーグもハモって歌って泣きまくり。そしていつものコーラス。完璧だ。

     ”Your Love Is Stranger Than Mine”はキーボード指向のマーチナンバー。後のアメリカンプログレハードみたいな雰囲気。最後のサックスソロも含めてアメリカ的な明るさ満開。’79年だから、もうサウンドは’80年代のそれに向かっているんだね。

     続く”Eye Of The Storm”はKit Watkinsの曲。Happy The Manでのサウンドよりもオーケストレーションに力が入っている。Happy The Manも、3rdのときにいいレコード会社とプロデューサーがいたらよかったのにね…。

     ”Who We Are”は7分を超える曲。新加入のJan Schelhaasのピアノ、Kit Watkinsのシンセ、Andrew Latimerのアコギが、豪華なストリングスアレンジと共に徐々に重なっていく様が美しい。新ラインナップがすんなりとCamelという庭の中でクリエイティビティを発揮していることがすばらしい。

     M6の”Hymn To Her”でギターが泣きまくりの典型的なCamelが出たと思ったら、M8の”Remote Romance”では’80的エレクトリックサウンド全開。このアルバムの邦題は「リモートロマンス」だったんだよね。軽くていいなあ。

     最後を飾る”Ice”は10分超の大作。Camelの、すなわちAndrew Latimerの、ギターの魅力がすべて詰まった壮大な作品。果てしなく幻想的で叙情的。美しすぎる。

     すべて聴いてみると、この一枚がプログレッシブロックだと言っても過言ではないと感じる。話題に上ることは少ないアルバムだが、これは傑作だ。

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